1.国債の金利はどうやってきまるのか
新発国債の金利は財務省が決定します。
国債は10年債をはじめとして大部分が価格競争入札によって発行されます。応札に応じる金融機関にとって魅力的な利回りであれば入札価格が上がり、そうでない場合には下がることになります。
国債の発行手続きを行う財務省は、入札の前日までに国債市場の特別参加者等の主要な入札参加者に対して聞き取り調査を行います。そのうえで、投資家の需要や各金融投資家がどの程度の金額であれば入札に応じるかを確認した上で、入札日当日の債券相場の状況も踏まえて最終的な国債の利率を決定します。
財務省は、年度の国債発行計画を前年12月に発表していますが、毎月の発行予定は3か月前にスケジュールが公表されます。
入札当時の10時30に、各国債の利率や発行日、償還日の詳細等が財務省から公表されます。入札に応じる金融機関は、日本銀行の提供する日銀ネット通じて入札に応じます。
入札価格の高い(利回りの低い)入札者から順次割り当てが行われ、最終的に発行予定額に到達したタイミングで入札が完了となります。
2.社債の金利はどうやってきまるのか
国内債券で最も安全なものは国債です。デフォルトするリスクがない国債の金利をリスクフリー金利といいます。
民間企業が発行する社債の金利は、国債よりリスクが高いため、その分国債の金利に上乗せされます。
フリーレートに上乗せされる社債のリスクは大きく以下の三つがあります。
①発行体企業の信用リスク
②金利変動リスク(金利が変動することによって、債券価格が変動するリスク)
➂流動性リスク
発行に当たって、引き受け証券会社がそれぞれのリスクを勘案し、国債金利に上乗せする金利を計算するのが一般的です。さらに、市場の需給を予測し、類似企業の償還期間が近い債券と比較するなどして、バランスを取るようにして最終的な金利が決定されます。
このようにして決まる社債の金利と国債の金利の差をスプレッドいいます。
スプレッド=ある社債金利―国債金利
上記の事から、スプレッドは社債のリスクの高さを判断する指標となります(大きければリスクが高く、小さければリスクが低い)。
たとえば、10年物国債の金利が1.5%の時、10年償還の社債が2.5%で発行された場合、スプレッドは1.0となります。同じ企業の国債が金利3.0%で発行されると、スプレッドは1.5にワイドニング(逆はタイトニング)したということになりますが、これは財務状況が悪化し、リスクが増大したことや需給環境が悪化したことを意味します。
なお、直近の社債に関するニュースとしては、楽天グループが2022年11月30日に発行したドル建ての無担保優先債(ドル建て社債)の発行条件として、年限2年のディスカウント債で、利率は年10.250%(割引分を加味した最終的な利回りは12%)という債券を発行したことがニュースになりました。2019年に起債したドル建て債(3%台)から大きく上回る水準となっておりますが、これは、裏返せば、これだけの利率を付けないと投資家からお金を集めることが難しいという同社の苦境を反映しているものという解釈も可能となるようなニュースでした。
3.債券の売買相場について
そもそも債券については、株式とは異なり、個人投資家にとっては短期売買で利益を得ることを目的とした金融商品ではなく、償還まで保有する長期投資が基本(個人向け国債だけは額面通り途中換金ができる)となります。債券の売買については、投資家同士の相対取引が基本ですが、種類・期間・限月・数量等の条件が多種あるため、希望条件が一致する相手を探すのは現実ではありません。そのため、証券会社に売却することが通常ですが、証券会社その債券の市場相場や流動性リスクを加味して取引価格を決めるため、その売却価格は証券会社によって違ったり、そもそも取り扱ってくれないということもありえます。
なお、相対取引である債券の取引価格をリアルタイムで把握するためには、Bloombergやロイターといった専門業者の端末が必要となります。世界中の金融機関などの金融のプロが使っている金融情報端末はBloombergのターミナルが有名です。
4,国債の市場相場を把握するには
債券売買で個人投資家が困るのは、証券会社に聞かないと取引相場が分からない点ですが、国債相場に関しては先物の値動きからある程度判断できます。
国債先物は大阪取引所に上場している国債の先物取引商品です。これは、現物の国債とは子なり、証券取引所が利率、償還期限等を標準化して設定したもので「標準物」と呼ばれています。国債先物の取引時間中は、機関投資家を中心に活発に売買が行われており、最新の価格が更新されています。これは、取引金額が大きい機関投資家による取引が中心なので、プロが考える今後の債券相場の見遠いが先物価格に反映されていると言えます。
ここでは、先物価額が同じ残存期間の国債の現物価格の参考にされるため、金融市場に信用不安が生じた際には、国債先物の価格を見ることで、債券市場の受け止め方を把握することが可能です。株式市場における日経平均株価のようなイメージの指標となります。
<参考>
日本経済新聞:2022年11月25日楽天G、携帯事業継続へ覚悟の「12%」社債