【第3回】シンガポールにおける移転価格税制

【移転価格税制】
移転価格税制とは海外関連会社との取引を通じた利益の移転を防止し、自国の税収確保を目的とする制度のことです。例えば、日本の親会社からシンガポール子会社へ商品を販売する際に、第三者へ販売する価格より低い価格で販売したとします。この場合、日本の親会社の利益は通常より少なくなるので、結果として日本から海外へ利益が移転したことになります。移転価格税制は、このような海外の関連会社との取引を通じた所得の移転を防止するための税制です。

シンガポールの移転価格ガイドラインによれば、関連会社との取引については、原則として取引価格を設定する過程で移転価格文書を作成し、保管することが要請されています(同時文書化)。

ただし、実務上の負担を考慮して、以下の取り扱いとなっております。

✔取引のあった年度の法人税申告書の申告期限まで(事業年度終了日の属する年の翌年11 月末)に作成

✔移転価格文書を法人税申告書と一緒に提出する必要はなく、IRAS の要請があった場合において30 日以内に提出する義務有

✔納税者の移転価格文書作成のコスト削減のため、次の取引に関しては、関連会社間取引であっても移転価格文書までは作成する必要はない。

☆ シンガポール国内取引の場合(同じ税率の法人間での取引)
☆シンガポール国内でのローン取引の場合(貸金業を除く)
☆ローン取引で指標金利マージンを適用している場合(1,500 万 S ドルを超える貸し付けは除く)
☆ルーティンサポートサービスの提供で、5%コストマークアップを採用している場合
☆事前確認制度を利用している場合
☆ 関連会社間取引が、各事業年度で一定の金額を超えない場合
⇒売上・仕入:1,500 万 S ドル、サービス・ロイヤルティー:100 万 S ドルなど

なお、2019 賦課年度以降は、総収入金額が 1,000 万 S ドル以下であり、かつ、その前年度において移転価格文書化義務がない場合には、上記免除要件のいずれも満たしていなかったとしても、移転価格文書化の義務がなくなります。

【ルーティンサポートサービス】
シンガポールでは、ルーティンサポートサービスと呼ばれる限定的なルーティン業務(いわゆるバックオフィス業務やアドミニストレーション業務等に限る)の役務提供であれば、当該業務を行うに要した直接および間接費用に 5%のマークアップをした金額を収益認識することによって、シンガポールにおける移転価格税制上は適正な取引として取り扱う旨を定めています。

なお、ルーティンサポートサービスの範囲を超えて関連会社に役務提供を行っているとみなされた場合には、第三者との間で同様の取引が行われた場合における取引価格(独立企業間価格)、すなわち原則的な移転価格税制に基づいた課税所得計算が求められるので留意が必要です。

<出典・参考URL>
JETRO : https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2022/3240d5bc2269d430/202212.pdf
IRAS : 「Transfer Pricing」

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